アステック株式会社 半導体事業部 本文へジャンプ
電気と物理

電気の物理的性質

電気の理論はたくさんの法則や数式で構築されているため、電気を利用する場合そのほとんどにおいて計算することで簡単に取り扱うことが出来ます。
しかしながら、インピーダンス整合のように工学的汎用性を持たせたが為にその奥にある事象を見渡すことが出来なくなっている場合もあります。
ここでは工学的要素から外れ、電気の物理的な性質について話をしていきます。



電荷と電場

電気における最も根源的な”力”は「クーロン力」です。すべてここから始まります。
「クーロン力」は別名「電磁気力」とも呼ばれます。

自然界を形作る根源的な”力”は「重力」「電磁気力」「弱い力」「強い力」の四つであると考えられています。
「重力」は質量のある物質がお互いに引き合う力、「弱い力」と「強い力」は原子核内で働く力です。
そして「電磁気力」は、電荷を持つ物質と関わる力です。人間の五感で体感可能なのは「重力」と「電磁気力」だけです。物を持ち上げると重く、静電気で感電すると痛いものがそれです。
電子を動かしたり、原子と原子を結合して分子を形作るのがクーロン力の作用です。電気と磁気の働きもそうですが、燃焼などの化学反応もクーロン力の作用です。比較的低エネルギーで取り扱うことが出来るため、私たちの身の回りのあちこちで利用されています。
しかし、「弱い力」「強い力」は「クーロン力」に比べ高いエネルギーでないと取り扱えません。中世にて錬金術が上手くいかなかったのもそこにあります。錬金術は結局、「クーロン力」しか扱えませんでした。燃焼などではエネルギーが足りなくて原子核の組み替えは出来なかったのです。しかし近年では高エネルギーを扱えるようになり、原子核の組み替えが可能になりました。
「クーロン力」は簡単に利用することが可能ですが、なぜその様な力が働くのかは、現在でもよく解っていません。

クーロン力は同じ電荷を持つ物同士では反発し、異なる電荷を持つ物同士は引きつけあうという性質を持っています。クーロン力は観測することが出来たので「クーロンの法則」が導き出されました。
電荷とは電気的な性質を持つ粒子です。電荷には正電荷と負電荷とがあり、正電荷が正孔、負電荷が電子になります。また電荷は荷電粒子とも呼ばれます。
電荷の単位は「クーロン [C]」で、1クーロンは1秒間に1アンペアの電流が流れたときに溜まる電荷量になります。

電荷の存在はその周りの空間に電位の勾配を発生させます。電位の勾配とは空間のひずみとも例えられます。そのひずみが”電場”と呼ばれます。電場とクーロン力の違いは、電場は電荷単体が周りの空間に与えるひずみのことでクーロン力は二つの電荷間に働く力です。
電荷とクーロン力のアナロジーは質量と引力です。質量が存在すると周りの空間がひずみ、お互いを引き合う引力となります。しかしながら空間のひずみ(重力)を直接計測することが出来ないので”引力”から「質量」を定義しています。『電場』も空間のひずみ(電位の勾配)を直接計測することが出来ないため”クーロン力”から「電荷」を定義しています(SI単位系では電流を基本単位と定義し、電荷は組立単位になっています)。

ある場所に正電荷同士が集まり、また違う場所に負電荷同士が集まると、その場所間には電位差が発生します。この電位差はエネルギーとして利用することができます。それがキャパシター(コンデンサー)です。
コンデンサーは電位差がある場所間に「誘電体」を挟みこんだものです。誘電体は直流電流を通さないという特徴があります。
誘電体の性質を数値で表すときは「真空の誘電率」との比をとった比誘電率で表されます。
また、「誘電率」とは電荷に外部から電場を与えたとき、物質中の原子(あるいは分子)がどのように応答するかを表した値です。



電流と磁場

電荷は起電力をかけられると、正電荷同士がクーロンの法則で押し合いながら電位の高い方から低い方に移動していきます。電流とはこの正電荷の流れのことをいい、単位は”電荷が単位時間にある断面を通過する量”で表す「アンペア」を用います。電流が流れるとき、負電荷(電子)も動きますが、動く方向は正電荷と反対方向になります。
そして電流が流れると、電場が時間的変化をすることで”磁場”が形成されます。
このとき電流の流れる向きと磁場の発する向きは互いに直交します。電流がたくさん流れるほど磁場は強くなります。磁場の性質は空間にエネルギーを保存できることです。例えば、流し続けた電流を瞬間的にカットしても磁場はそのまま残り続けようとし電流を流し続けようとします。このような磁場のエネルギーを利用した物がインダクター(コイル)です。
また、磁場と磁束密度の関係した値を「透磁率」と呼びます。

ここまでの電気の動きをまとめると、
電荷が存在することで周囲の空間にひずみを与え”電場”となり、
起電力を与えると、同極性の電荷同士がクーロン力で反発し合いながら同一方向へ動くことで電流となり、
そのときの電場の変化が空間と時間に関係し”磁場”となり、
その磁場の向きは、電流の流れる方向と直交する方向で形成される。
ということになります。
このとき、電場が変化すれば磁場が変化します、磁場が変化すれば電場が変化します。そしてお互いが影響し合いながら空間を伝わると電磁波になります。



電磁波

テレビ、ラジオ、携帯電話などに代表されるように電磁波は非常に身近な存在になっています。
しかしながら電磁波は物質として存在しないため、実体は分かりにくいものとなっています。
電磁波は読んで字のごとく波として進みます。しかし、水と波の関係のように物質を媒体にする必要がないため、真空中でも波として進むことが出来ます。19世紀には媒体が無いと波は伝わらないため”エーテル”という存在が考えられていましたが、マイケルソン・モーリーの実験以降エーテルは否定され、”電磁波は空間を媒体として進む”と考えられています。
空間を電場と磁場とに分け、電磁波は電場と磁場を変化させながら伝わるというわけです。そして電場の波と磁場の波は互いに直交しながら進むという性質があります。

私たちが普段耳にする電磁波と電波と光(可視光線)はそれぞれ呼び名は違いますが同じものです。電磁波の中に周波数帯域による呼び分けがあり、それらの帯域で電波と呼んだり光(可視光線)と呼んだりします。
電磁波の伝わる速度は真空中で秒速約30万キロメートルになります。それ以上の速度で伝わることはありませんが、物質の内部では遅く伝わります。物質の内部とは光ファイバーや水中や導線などです。

ここで、なぜ真空中の光の速度が一定になるのかについてですが、マクスウェルの方程式では「誘電率」と「透磁率」との関係式で電磁波の伝わる速度が表されます。
マクスウェルは方程式から電磁波が光であることを予言し、ヘルツによって実証されました。
その後、マクスウェルの方程式とニュートン力学の矛盾からローレンツやポアンカレ等により数理的な礎を築き、アインシュタインの相対性理論にて真空中での光の速度は一定であることが示されました。

光=電磁波は、エネルギーを運ぶ”運び屋”といえます。
電磁波が波として伝わり、伝わった先に電荷が存在すると、今度は逆に磁場と電場を通じて電荷を動かすことになります。そして負電荷を持つ電子が動くことでその運動をエネルギーとして取り出すことができます。もし、電磁波の受取手がいないと無限の彼方まで伝わります。
身近なところでの電磁波は、太陽光と地球の関係です。太陽光は太陽から発せられ真空中を伝わり地球に届き、地球は熱エネルギーを持つことが出来ます。

交流電流のなかで高周波電流を扱うのがやっかいになってくるのは、周波数が上がってくるに従いこのようは性質を持つ電磁波を考慮に入れなければならなくなってくることです。そしてそれは同軸ケーブルの長さや回路の線路長に影響されます。

ちなみに、電流の元になる電荷は物質であるため移動速度は大変遅い物になります。
電流の大きさにもよりますが、例えば断面積1muの銅線に13.6Aの電流が流れるときに秒速10p程度だと考えられています。速度が遅いのは、電子は電界をかけられてランダムな運動をしながら移動しているからです。ランダムな運動とは電子が原子に衝突したり、その後再び加速したりしている状態です。



リアクタンス

リアクタンスでは電力として消費されることはありませんが、ここではその理由を考えてみます。

『電力とは単位時間に電流が流れることによって行う仕事量のこと』ということですが、リアクタンスにも電流が流れ電圧が発生すれば電力として計算されます。しかし、ここで計算される電力は無効な仕事量で”無効電力”と呼ばれ、単位は[Var] バールで表されます。
なぜ電流が流れても仕事量にならないのか、それは電流がエネルギーとして消費されないからです。まずはコンデンサーからその働きを見ていきます。

コンデンサーの電極間には誘電体が挟み込んであります。この誘電体という物は電流を通しません。そういわれても実際に電流が流れているではないか、と言われるでしょう。それでは、誘電体は”真空”であるということにしましょう。真空コンデンサーというわけです。
真空であれば電極間には物質がありません。物質がないということは電子も存在しません。電子がなければ電流は流れません。しかし真空コンデンサーは電子が無くても電流が流れているように見えます。こうした電流を「変位電流」と呼びます。
変位電流の流れ方は以下の図のようになります。

電極間に起電力Eをかけると、片方の電極には正の電荷が時間の経過とともに集まってきます。それと同時に、反対側の電極には負の電荷が時間の経過とともに集まります。電極間の真空中には電流が流れていませんが、回路としてとらえた場合、電流が流れているように見えます。また、時間の経過に伴って電位差も増え始めます。
このとき、コンデンサーに蓄えられる電荷と電極間の電位差の比例定数が”キャパシタンス”と呼ばれ、単位は「ファラド [F]」で表されます。
そして、起電力Eと電極間の電位差Vが同じになるとき、電流が止まります。
この性質がコンデンサーは直流電流を流さないという理由です。この状態になると、電極間に流した電流に比例する電荷が集まっている状態になり、電場としてエネルギーを溜め込んでいますので、電位差は最も大きな値となります。
次に、起電力Eを下げていこうとすると、エネルギーとして溜め込まれた電荷も放出されていきます。溜め込まれた電荷が無くなると、電極間の電位差もなくなります。
こうして起電力をかける方向を交互に変えて繰り返すのが交流電流ですので、コンデンサーには常時、電流が流れているように見えます。
このように、電流が流れても仕事量にならないのは、真空中で電子の移動が無く、エネルギーの消費は起きないのと、電流は電場のエネルギーに変換して溜め込まれ、また変換して電流として放出されるためです。しかし、エネルギーが溜め込まれる際と放出する際には電圧が現れ、回路に電流も流れているため”無効電力”という仕事量にならない電力という概念が出てくるわけです。

つぎにコイルを見ていきます。
先のコンデンサーでは各電極の電場にエネルギーを溜めましたが、コイルは磁場に方向性のあるエネルギーを溜め込む性質があります。そしてそれは真空中でも同じです。
コイルに電流を流そうとするとき、コイルの周りにある磁場はそれを阻止しようとします。力学でいう「慣性の法則」と同じく、状態を保持しようと働くわけです。そのため電流を急激に流し込むことは出来ません(微少な時間での話)。しかしそれでも電流は徐々に流れ込んでいきます。このとき、電流の大きさに比例してコイルの周りにある磁場にエネルギーが溜め込まれます。また、その時電流を流すまいとする起電力も現れます。電流が一定になるときが磁場に最大のエネルギーが溜め込まれた状態です。そしてその時コイル端子間の電位差は”ゼロ”になります。電位差がゼロということは電力として消費されないことを意味します。そして磁場の磁束の向きはすべて同じ方向に揃っています。磁束の向きとはN極とS極です。つまり、この状態は磁石と同じ状態ともいえます。理科の実験で、乾電池を使いエナメル線を巻いたコイルを使って砂鉄をくっつけた経験を思い出される方もいると思います。

ここで、磁場が形成されているのになぜ電力が消費されないのかと思われるかもしれません。それは、”磁場が時間とともに変化しない”または”物体に対して運動を働きかけない”からです。もし、”磁場が時間とともに変化する”と電磁波としてエネルギーを放出します(無線通信等)し、”物体に対して運動を働きかける”と磁場エネルギーが運動エネルギーに変わります(モーター等)。

次にこの定電流状態から電流を減らしはじめます。するとコイルは溜め込んだ磁場のエネルギーを保存しようとする働きをします。ここでも「慣性の法則」と同じ現象で、今度は磁場エネルギーが電流を流し続けようと作用します。その時にもコイルに起電力が現れます。コイルは磁場エネルギーが無くなるまで電流を流し続けます。
こうして発生する起電力の比例定数が”インダクタンス”と呼ばれ、単位は「ヘンリー [H]」で表されます。。

こうしてコイルについても、電流が流れ起電力という電圧も現れますが、エネルギーの消費は無く、電流は磁場のエネルギーに変換し溜め込まれ、また変換して電流として放出されるため仕事量にはなりません。そのためここでも”無効電力”が出てきます。

注意:ここでのコイルの働きは単純化したモデルです。実際はコイルは磁場エネルギーを電磁波として空間にある程度放射してしまいます。


結局、要するにコンデンサーもコイルも電流を電磁エネルギーとして保存し、それを電流で放出することで差し引きゼロになっています。電流は電場や磁場という形に途中で変わりますが、もらったエネルギーをそのまま返しているので電力を消費したことにはならず、損失にはならないということです。

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